#02 MEMORY LOREベッドサイドに放っていたスマートフォンが小さなアラーム音を奏でるのに導かれる様瞼を持ち上げると、感覚だけで伸ばした片手は端末を掴み片手間にロックを解除する。立ち上がる画面には今の時間と共に幾つかのメッセージを知らせる通知がポップアップで立ち並んでいた。未だ微妙に目覚めていない頭の儘ベッドから降りると、渇いた喉に水を一杯流し込み、カーテンを開ければ薄く差し込む陽射しに目を細める。晴れている日の方が少ないくらいだが、なけなしでも朝の日の光を取り入れたいという心持ちは大切にしていたい。 キッチンへと向かい片手間に電気ケトルのスイッチを入れると、食パンにチーズを一枚、ボウルでコンビーフとコーンとマヨネーズを混ぜたものを乗せて胡椒を少々、其の儘トースターに突っ込んだ。本当は目玉焼きかサラダくらい付け合わせが欲しいところだがそれはまた別の機会に。 待つ時間も惜しく洗面台へと向かって鏡越しに自分の顔を見る。ぼさぼさの頭を掻きながら歯を磨き口をゆすぎ、顔を洗った勢いの儘濡れた手で長い前髪を上げた。シェービング剤を泡立てて髭を剃り洗い流してから、化粧水で保湿して軽いベースメイクを済ませる。立てかけてある小筆を取り仕上げに目尻へ丸く紅を入れた。 部屋へ戻ると、腹立つ男の顔が口角を上げているRobloxの愛用マグにミルク、砂糖、ティーバッグを流れ作業で放り込み、既に沸き終わって少し時間の経っていたお湯をマグに注ぐ。紅茶の香りが手元から部屋へと広がっていくのと感じつつ一口啜ると、徐々に頭が覚醒していくのを感じた。 服を着て、髪をおおまかに梳かし、トーストを齧りながらスマートフォンを片手に今日のスケジュールとメッセージを確認する。朝一番のアラームからおおよそ一時間程度が経っていた。外出にはまだ少し余裕はあるが悠長にはしていられない。紅茶で残りのパンを流し込み口元を拭うと、鞄の中身を数えてからスマートフォンをポケットへ押し込み、足早に家を出た。 ‘───じゃあ、いってくるよ。’ |