※利用規約※ / 利用方法 / Q&A
Diary : Sole / Lune / Terra / Caelum
※表紙は「キャラクター名(ジャンル名)」で統一して下さい。※
7: V/O/X/A/K/U/M/A(2/4/3/4/E/N)
2026-01-10 18:59:58



#01 MEMORY LORE

自分が腕を奮った料理が二人分並ぶテーブル、同じ食器で同じものを食べる何の変哲もない食事風景。向かい合って談笑する合間に手元のカトラリーが小気味の良い音を立てて、一口また一口とお互いに目の前の食事を食べ進めていく。美味しいと喜んでくれる君の表情に思わず私も口元が綻んだ。君の為になら、私はどんなものでも作ろう。
さて私は残り一口、そろそろ食べ終わるかななんて思いつつ目線を上げると、君もちょうど皿の上は最後の二、三口のところまで来ていた。どうやら気に入ってくれた様だと嬉しさを抱えつつ、自分も残りを食べてしまおうかとフォークを傾げたところで、思わず動きが止まる。視線が釘付けになった。

君の繊細な指が添えられたフォークでぶつりと刺された肉から肉汁が皿の上に溢れて、持ち上がるのを目線で追っていくと、あ、と普段慎ましやかな唇が開く。白い歯が覗いて君の濡れた口の中が少し見えると、急に血液の温度が上がったかの様に心臓がどくどくと大きな音を立て始めた。口元へ運ばれた肉の弾力ある表面に歯が立てられると、繊維が噛みちぎったところからぶちぶちとちぎれて口の中へ迎え入れられていく。覗いた舌のクッションが無抵抗に運び込まれる肉を掬い上げて、口が閉じると咀嚼する度に唇に残った脂がてらてらと照明に反射して細かく光り、その光景が異様に淫靡に見えた。私の手で作り提供したそれを君は一頻り味わい、呑み込めば薄い喉が僅かに上下して。満足した様に脱力して緩んだ唇が無防備に薄く開くと、隙間から湿った息が零れる。君はそこで漸く私の視線に気づいたのか私の顔を見つめて、どうしたの、なんて気の抜けた不思議そうな表情をした。

我に返った私は取り繕う様に、いや、美味しそうに食べてくれて嬉しいよ、なんて言いつつフォークを掴み直し、自分の皿の一欠片を口へと導く。自分の喉が呑み込む時の音とフォークを皿の上に置く音がやたらと大きく聞こえて、もう食事は終わったと言い聞かせる自分の脳内の声を押し退ける様に、頭の中にはさっきのたった数秒の光景がgif画像みたいに何度も繰り返していた。‘ご馳走様でした。’君が口元を拭いながら満足げに微笑む、互いの皿は既に空になっている。然し目にしたそれは私の隠し持つ欲を掻き立てるには充分だった。自分の口内にじゅわりと唾液が溜まるのを感じて口角が上がる。

毎日、毎日の、食事という欲深い儀式の時間。私の作った料理で君の身も心も満たされていく、まるで君の身そのものを私が作り上げているかの様な感覚に酷く陶酔した。君は今日も私の作る料理を無防備に味わい、咀嚼し、胃に収めていく。昨日も、一昨日も、今日も、そして明日も。ただ私に与えられるが儘を享受する姿が、愛おしくて仕方が無かった。 私を満たすのも君である様に、君を満たすのも私だけが良い。こんなドロリと口内に溢れた欲望はどうしてくれよう。君の腹の底が見えない。尚私に染められることを選ぶか、この後ろめたい情欲を突き返すようになるのか。固く結んだ口の中で密かに喉へと呑み下し 胸中へとしまい込んで、嗚呼、美味しかったねと素知らぬ顔。欲に任せて溢れそうになる言葉の、代わりに口から出たのは “ご馳走様。”……さて、明日は何を作ろうか。

[編集][削除]

編集パスワード(変更する場合は入力してください)

削除パスワード(変更する場合は入力してください)

名前

メールアドレス

メッセージ

文字色


編集パスワード